かつてレストランを経営していた頃、カウンターキッチンということもあり、お客様とお話させていただく機会が多くありました。
何気ない世間話から、ご近所の噂話、ご家族のことや趣味のこと。そういった時間は、調理が落ち着いて、ホッと一息つける癒やしの時間でした。
時には、お店や経営についての金言をいただく事もしばしば。
私にとって、とても役立った言葉、忘れられない言葉がたくさんあるのですが、今日はその中の一つをお話したいと思います。
私がレストランを開いたのは、ちょうど今と同じ6月でした。
その年の6月は、もうすでに真夏並みの暑さが続いており、中国料理は敬遠されるのではないかと不安になっていたことを思い出します。
オープンしたては、家族や親戚、友人などが食べに来てくれましたので、それなりに席は埋まっておりました。
その身内の足音が途絶え始めた翌月から、一度来てくださった方の口コミやリピーター様にオープン景気も相まって、ありがたいことに忙しい毎日。
その頃はオープンの頃の不安は少し薄れ、私は浮かれ気味だったように思います。
そんなある日のランチタイムに、レストランの内装工事でお世話になった社長さんが、食べに来てくれました。
お店が繁盛している様子を見て、社長さんは私事のように喜んでくださっています。
いやー良かった!良かった!よう頑張ってるやん。
とりあえず一安心やなあ、お客さんもようついてくれてるみたいやん、と。
「でもな。」
…はい?
「わしも商売ずっとやってるけどな。」
「商売は水もんやって言うやろ。ずうっとエエ時ばっかりやない。今は良くても、いずれ必ずアカンようになることもある。お客さんが来ぇへん、どないしようっちゅう時が来る!」
ちょっと縁起でもない事…。
「そやけどな、商売っちゅうのは、
そっからがオモロイんや!!」
地声が大きな社長さんの声は、さらに大きくなって、まるで怒鳴っているかのようです。
「そのうちな、どう頑張っても、お客さんが来ぇへんようなる時が来る。それでもな、一生懸命もがいてもがいて、ガムシャラにやって、店の前出て声出して、呼び込みでもなんでもやって、ほんで!そっからや。」
「そっから商売が、オモロなるんや!!」
社長さんは、業績が下がった時でも、それを乗り越えてやろう!と真正面から立ち向かかったら、オモロいという感情が湧き出してきたそうなのです。
ダメになってからが面白い。
とても深い言葉です。
そういう風に考え方を変えてみたら、何事にも臆せず、挑戦できる気がしませんか?
何故なら失敗したとしても、それも楽しみの一つにしてしまう。つまり挑戦した結果に対して、何一つネガティブな要素がなくなるんですからね。
そして私はというと、社長さんの言った「そっから」の場所に立っています。
そっからがオモロい。
その言葉通りに、今日もワクワクしながら出張料理人をやらせてもらっているのです。
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